建築基準法第12条で定められた法的検査の一つに防火設備定期検査があります。
この検査は防火シャッターや防火扉などの検査を行います。しかしながら検査を必ず行う必要があるのか?罰則はあるのか?うその報告をしたらどうなるのか?わからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は防火設備定期検査の罰則に焦点を合わせた内容でわかりやすく事例を説明していきます。建物利用者が安心して過ごすためにも検査を行って下さい。
1.防火設備定期検査の罰則規定
防火設備定期検査の罰則内容として、報告義務を怠った場合と虚為報告を行った場合の2つあります。
いずれの場合でも、建築基準法の罰則対象となります。
防火設備定期検査の罰則規定は「報告を怠った場合は、建築基準法101条により、100万円以下の罰金が課せられることがあります」と定められています
また防火設備定期検査の規定は建築基準法第12条に定められている法定検査です。この検査報告を怠ること自体が法律違反となりますので定められた頻度で検査を実施して下さい。
それでは報告義務を怠った場合と虚為報告を行った場合について順に説明していきます。
1-1.報告義務を怠った場合
報告を怠った時には100万円以下の罰金が科せられます。ただし定期報告を行わない場合は直ちに罰せられるわけではなく
督促通知→ 電話連絡→ 立入検査
と段階を踏みながら指導が行われます。
これまでも、特定行政庁では、維持管理が不良な物件に対しての督促や立ち入り指導を行っていますが、平成20年の制度改正では、更に指導体制の強化が求められています。
定期報告を行わない場合は「検査通知書」が行政より再度送付されます。この通知を無視し続けていると次に督促状・勧告状が送付されてきます。現状これらの通知を無視し続けて罰金の処分まで行われたというケースは、今のところ確認できていません。
しかし、通知を無視し続けて、検査を行っていない時期に、万一建物で火災等が起きてしまったら責任は、その建物の所有者や管理者には非常に重たい責任が科せられます。
近年の判例では、執行猶予はつかずにいきなりの実刑判決となることが多くなっています。
定期報告を行う目的も安全を維持するためですので、建物を利用する人々の安全を守るためにも定期報告を行う必要がある建物に関しては必ず実施していただきたいと思います。
1-2.虚為報告を行った場合
定期報告は行う義務がありますが法律通りの検査を行うためには一定の費用が必要です。
しかしながら経費を抑えたいが為に、検査は行わずに報告書だけ作るよう検査会社に依頼するケースや、検査後に特定行政庁への報告書提出期限が過ぎてるにも関わらず検査日を偽造して提出するケースなどもあるようです。
いろいろな問題が出てきており、特定行政庁では火災等の事故の機会ごとに検査の指導強化が進められてきています。
平成28年6月1日には法改正により、資格者に対する処分基準の明確化を行いました。
具体的には定期検査は、一級建築士、二級建築士及び防火検査員資格者証の交付を受けている者が行うものとし検査は行わずに報告書を作った、検査日時が実際の検査日と違う等、不誠実な行為をした者に対して資格者証を返納する命令等の規定を設けて処分の基準が明確化されました。返納処分に応じない場合は30万円以下の罰金も必要となり罰則の厳格化がすすめられています。
“平成28年の法改正のきっかけとなった事故について”
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平成25年2月に起きた「長崎市のグループホームにおける火災事故」や平成25年10月に起きた「福岡市の診療所における火災事故」等、高齢者等が居住する介護施設や病院等での大きな火災事故が続いたためです。
これらの施設については、特定行政庁において報告対象の建物とされておらず、法律に基づいた定期報告を行わないため不具合のある設備を発見する機会がなくこのような事故につながった可能性があるとの指摘がありました。
こうしたことから、特に高齢者が居住する施設など安全性を確保する必要性が高い建物については、 全国的に定期報告を義務付け、所有者に建物を資格を所持する専門家にチェックを行わせ、安全を維持する義務を課するために平成28年の法改正につながりました。
2.まとめ
防火設備定期検査は建築基準法により報告義務があり、報告を行わない場合は罰則規定があります。
虚為報告を行った場合も資格者証を返納する命令等の規定を設けて処分の基準が明確化されました。しかしながら万一、火災などの事故が起きた場合は建物の所有者や管理者に刑事罰が科せられます。
検査を行う場合は費用がかかりますが一歩間違えば、人命を損なう悲惨な事故にもつながりますので建物を利用する人々の安全を守るためにも定期的に検査を行っていただきたいものです。
「防火設備定期検査」についてもっと詳しく知りたい方は当ブログ「防火設備定期検査|火災から守るために最低限知ってほしい内容と費用」を是非お読みください
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