「ビルの管理をすることになったが、貯水槽の清掃ってどうすればいいの?」
「マンションの貯水槽を清掃しなければならないらしいが、誰に何をしてもらえばいい?」
ビルのオーナーや管理担当者で、そんな疑問や悩みを持っている人もいるでしょう。
たしかに、ビルやマンションなど不特定多数の人が利用する建物では、貯水槽を定期的に清掃することが法律で義務づけられています。
もし貯水槽が汚れていたり破損していたりすると、飲料水の中にサビや雑菌、異物などが混入するおそれがあり、利用者の健康被害につながりかねないからです。
清掃を怠ると最高100万円の罰金が科せられるほど重大な管理義務ですので、ビルオーナーや管理責任者であればかならず実施しなければなりません。
そこでこの記事では、ビルの貯水槽の清掃について知っておくべきことをまとめました。たとえば、以下のような事柄について解説しています。
◎貯水槽の清掃についての法律と罰則
◎清掃の頻度・管理者・作業者などについての規定
◎ビル管理者がすべきこと4ステップ
また、貯水槽清掃は専門業者に依頼して行うため、以下のこともお知らせします。
◎貯水槽清掃当日の流れ
◎貯水槽清掃を請け負う業者と料金相場
最後まで読めば、ビルの管理者として、法律の定めにしたがった正しい貯水槽の清掃を行えるようになるはずです。この記事で、あなたのビル・マンションの貯水槽がいつもきれいに清掃され、衛生的に保たれることを願っています!
目次
1. 貯水槽の清掃は法的な義務
ビルやマンションに設置されている貯水槽には、定期的に清掃を行うことが法律で義務付けられています。そこでまず、この法律についての基本的な知識から身に着けていきましょう。
1-1. 「貯水槽」とは
そもそも「貯水槽」とは何でしょうか?
ビル管理においては、ビルやマンション、学校や病院といった大勢の人が利用する建物に設置された、水を貯めておく水槽を指し、主に以下の3種に大別されます。
◎受水槽
◎高置水槽(高架水槽)
◎貯湯槽
それぞれの意味と役割は以下の通りです。
貯水槽 |
受水槽 |
水道局から水道管を通って供給された水を、いったん貯めておくための水槽。 |
---|---|---|
高置水槽(高架水槽) |
ビルの屋上など、高い場所に設置された貯水槽。 |
|
貯湯槽 |
たくさんのお湯を必要とする建物で、あらかじめ加熱したお湯を貯めておくための水槽。 |
水道水は水道局が管理していますが、一度建物の貯水槽に入った水は水道局の手を離れて、建物の管理者が管理責任を負うことになっています。
そのため、ビルのオーナーや管理責任者には、貯水槽を適切に管理する義務があります。その管理の一環として、清掃も法的に義務付けられているというわけなのです。
1-2. 貯水槽の清掃に関する3つの法律
ビルのオーナーや管理責任者は、毎年少なくとも1回は、貯水槽の清掃を行わなければなりません。
これについては、以下の3つの法律で定められています。
◎水道法
◎水道法施行規則
◎建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)施行規則
その内容を簡単にいうと、
◎貯水槽の管理者は、水槽の清掃を毎年1回以上、定期的に行わなければならない。 |
というものです。
これを怠ると、建物内で使用される水の水質が悪くなり、利用者の健康を害する恐れもあります。そのため、違反者には最高100万円という高額の罰金が定められているのです。
どの法律にどんな内容が定められているか、さらにくわしくは以下の表にまとめましたので見てください。
ちなみに、各法律の内容にある「簡易専用水道」とは、受水槽の有効容量が10立方メートルを超える給水設備のことです。これについては「2-1. 清掃が義務付けられている貯水槽」で詳しく説明します。
法令 |
条項 |
内容 |
---|---|---|
水道法 |
第34条の二 |
・簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならならない。 |
第54条の八 |
第34条の二に違反した者は百万円以下の罰金に処する。 |
|
水道法施行規則 |
第55条 |
・簡易専用水道の管理者は、水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと。 |
第56条 |
・第34条の二で定めた検査は、毎年一回以上定期に行うものとする。 |
|
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)施行規則 |
第4条七 |
・貯水槽の清掃を、一年以内ごとに一回、定期に行うこと。 |
国が定めた法律に加えて、各都道府県の条例でも貯水槽の清掃について定めている場合がありますので、そちらも確認してみてください。
1-3. 貯水槽の清掃を怠った場合の2つの問題
ところで、もし貯水槽の清掃を怠ると、どんな困ったことが起きるでしょうか?それについては大きく以下の2点が挙げられます。
◎法的な罰則:清掃の義務を怠ったとして、最高100万円の罰金を科せられる
◎衛生的な問題:貯水槽内にサビや汚れが生じ、それが混入した水を利用した人に健康被害が及ぶ
では、それぞれ説明しましょう。
1-3-1. 法的な罰則
前項でも触れましたが、貯水槽の清掃は法的な義務です。これを怠った者には罰則も定められていて、最高100万円という高額な罰金が科せられる可能性もあります。
その条文を以下の挙げておきますので、ビルオーナーや管理責任者の方は心しておいてください。
【水道法】
|
1-3-2. 衛生的な問題
清掃を怠ることで、当然ですが水質が劣化するという衛生面での問題も生じてきます。
というのも、貯水槽には金属の部品が使用されているからです。それが長時間水にさらされることで、サビが生じてしまう恐れがあるのです。
さらに、サビによって腐食が進めば、そこから虫や異物が侵入するかもしれませんし、それ以外にも汚れがたまってしまうでしょう。
となると、建物内で水道を利用する人には、サビが混ざった赤水や汚れ混じりの水が供給されることになりますよね。不衛生な水を口にすれば、体調を崩す人が出てもおかしくありません。
そんな被害を防ぐために、定期的な清掃は必須なのです。以上ふたつのリスクを避けるためにも、貯水槽の清掃は必ず行わなければならないというわけです。
2. ビル管理者が知っておくべき貯水槽清掃の規定
貯水槽の清掃は、ビルの管理者にとって法的な義務であることはわかりましたよね。といっても、実際に清掃作業をするのは、もちろんビルのオーナーや管理担当者ではありません。
実際の作業をするのは誰でしょうか?
どのくらいの頻度で清掃が必要でしょうか?
実際に作業をしなくても、ビル管理者が知っておくべきことがいくつかあります。この章では、その内容についてくわしく説明していきましょう。
2-1. 貯水槽の大きさによる規定の違い
実は、貯水槽の清掃義務は、その貯水槽の大きさによって管轄が分かれています。
◎受水槽の有効容量が10立方メートル超の場合:「簡易専用水道」と呼ばれ、国の法律(水道法)で清掃を義務づけ
◎受水槽の有効容量が10立方メートル以下の場合:「小規模貯水槽」と呼ばれ、各自治体(都道府県や保健所設置市)の条例や要綱などで清掃を義務づけ
となっているのです。
ですから正確には、前述した水道法での年1回以上の点検や罰金が科せられているのは、10立方メートルを超える大きな受水槽がある建物に限られます。
それ以下の貯水槽に関しては、以前は清掃義務はありませんでした。
平成14年に「水道法の一部を改正する法律」が施行され、「小規模貯水槽」についても各自治体の基準に従って管理することが義務付けられたのです。
ちなみに東京都の場合、都条例第7条により以下のように義務付けられています。
◎1年に1回以上、定期的に清掃すること
◎1年に1回以上、定期的に施設の管理状況の検査・点検をすること
◎検査・点検などを記録した書類を、5年間保管すること
つまり、管轄が異なるだけで、大きい貯水槽も小さい貯水槽も同様の清掃義務が課せられているのです。
「うちの貯水槽は10立方メートル以下の小規模貯水槽だ」という場合は、建物がある都道府県または市区町村の規定を確認し、それに従って清掃を行ってください。
2-2. 清掃の頻度
清掃の頻度はどの程度で行うよう規定されているのでしょうか?前項でも触れましたが、貯水槽の大きさによって規定は以下のように異なります。
貯水槽の種類 |
規定 |
頻度 |
|
---|---|---|---|
簡易専用水道 |
有効容量10㎥超 |
水道法による規定 |
毎年1回以上定期的に |
小規模貯水槽 |
有効容量10㎥以下 |
各自治体(都道府県や保健所設置市)の条例や要綱などによる規定 |
例) |
小規模貯水槽に関しては、都道府県の条例か、保健所のある市なら市の取り決めを確認してください。
おおむね1年に1回以上の清掃が義務付けられているようです。
2-3. 清掃の責任者
次に、清掃の義務を負う責任者については、以下のように定められています。
貯水槽の種類 |
責任者 |
責任者を定めた法令 |
---|---|---|
簡易専用水道 |
貯水槽の設置者 |
水道法第三十四条の二 簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。 |
小規模貯水槽 |
おおむね貯水槽の設置者 |
各自治体(都道府県や保健所設置市)の条例や要綱などを参照 |
ここでいう「設置者」とは、建物のオーナーや管理担当者、管理会社、管理組合などを指します。
これに該当する人は、決められた通り貯水槽を管理する責任があり、その一環として清掃の義務も負っています。
実際には、貯水槽を設置した際に保健所に届け出を行い、その中で管理責任者も定めているはずなので、その人が清掃についても責任者とされます。
もし清掃を怠った場合、その責任を問われるのも「設置者=管理責任者」ですので、かならず1年に1回以上の清掃を行いましょう。
2-4. 清掃の作業者
貯水槽の清掃について、責任を負うのは「設置者」ですが、実際の清掃を行うのはオーナーや管理人ではありません。
厚生労働大臣の登録を受けた有資格者しか行えないことになっています。具体的には以下の資格です。
◎貯水槽清掃作業監督者
◎貯水槽清掃作業従事者研修の修了者
有資格者には定期的な健康診断と検便が義務付けられ、体調に問題がない者だけが実際の清掃に携わることができると決められています。
3. ビル管理者が清掃業者に依頼する際にすべき4つのステップ
貯水槽の清掃は、ビルの管理責任者の義務ではありますが、実際に清掃をするのは資格を持った人だということがわかりましたよね。では、ビルオーナーや管理担当者は、清掃が正しく行われるために何をすればいいのでしょうか?
この章では、清掃業者に依頼する際にビル管理者がすべきことを、4ステップの流れで説明していきましょう。
3-1. 業者選び~依頼
まず最初のステップは、有資格者のいる清掃業者を選んで依頼することです。
このときにまず確認したいのが、「建築物飲料水貯水槽清掃業」の登録を受けている業者かどうか、ということです。
この登録は、厚生労働省が定めた基準を満たした業者のみが受けられるものだからです。
「建築物飲料水貯水槽清掃業」に登録されるには、以下の条件を満たす必要があります。
◎飲料水貯水槽清掃専用の器具(揚水ポンプ、高圧洗浄機、残水処理機など)を持っていること
◎清掃監督者として、貯水槽清掃作業監督者(または厚生労働大臣登録機関の講習を修了した者、建築物環境衛生管理技術者)がいること
◎実際に清掃を行う者は、登録業者または厚生労働大臣登録機関の貯水槽清掃作業従事者研修を修了していること
これらを満たしているかどうかが、貯水槽清掃について、必要な機材と知識を備えた業者を見極めるための一定の基準になるはずです。
また、業者選びのポイントとしては、以下のこともチェックするといいでしょう。
◆費用が明確か
→清掃費用について、ホームページなどで明示しているか、または見積もりを出してくれる業者を選びましょう。あとから追加請求などがないか、事前に確認しておく必要もあります。
◆多くの実績があるか
→業者の中には、「〇件以上の貯水槽を清掃した実績」などを明示しているものもあります。公開されていなくても、問い合わせて教えてもらうなどして、実績と経験が豊富な業者を探してください。
◆口コミでの評判がよいか
→ビルオーナーや管理会社などの評判、インターネットの口コミなどを調べて、評価の高いところを選びましょう。
◆事前にていねいに説明があるか
→どんな清掃をするのか、ビル管理者は何をすればいいのかなど、くわしく説明してくれて、疑問にもていねいに答えてくれる業者がいいでしょう。
以上を踏まえて業者をいくつかピックアップし、できれば相見積もりをとって費用の比較をしたうえでひとつに絞り、依頼します。
3-2. ビルの利用者に対する清掃・断水の告知
業者を選び、清掃の日時が決定したら、ビルの利用者に告知をしなければなりません。というのも、清掃時にはビル内の水道を断水させる必要があるからです。告知方法としては、以下が主流です。
◎マンションなどの場合、掲示板に貼り出す
◎入居者やテナントにビラをポスティングする
また、告知のタイミングは清掃日の2~3週間前、遅くとも10日前までには行ってください。
業者によってはこの告知も請け負ってくれるところもありますので、依頼時に確認するといいでしょう。
3-3. 清掃当日の立ち合い
清掃当日は、ビルオーナーや管理担当者がずっと立会いをする必要はないでしょう。
ただ、清掃終了後に水質検査を行うため、その検体採取の確認や、清掃終了の確認を求められることはあります。
正しく清掃が行われたか、自分で責任をもって確認するためにも、最後には立ち会うようにしましょう。
3-4. 後日送付される報告書の確認・保管
清掃終了後、水質検査の結果を待って、業者から報告書が送られてきますので、その内容を確認しましょう。
問題がなければいいですが、何か不具合が見つかった場合は、対応するのも管理責任者の義務です。
水質に異常があれば、ただちに断水してビルの利用者にその旨告知し、同時に保健所に連絡して指示を受ける必要があります。
報告書を含めて清掃の記録は5年間保管しておいてください。
4. 貯水槽清掃の流れ
ここまで、ビルオーナーや管理担当者の視点から、「知っておくべきこと」「実際にすべきこと」を説明してきました。実際の清掃は業者に依頼するからといって、ビル管理者が清掃作業の内容をまったく知らなくていいとは言えません。
というのも、清掃が終わった後には業者から報告書が送られてくるので、ビル管理者はその内容に目を通して、正しく清掃が行われたかを書面上で確認しなければならないからです。
そこでこの章では、実際の清掃作業について基本的な流れを説明しておきます。これを知っておけば、報告書を受け取ったときにも、何が書かれているのか把握することができるでしょう
4-1. 清掃業者による清掃準備
まず清掃前に、清掃担当者は以下のような準備をします。
◎清掃に使う器具の洗浄・消毒
◎作業着に着替え
◎清掃前の水質検査:給水栓の末端での残留塩素を測定、味、色、におい、にごりを確認する
優良な業者であれば、特に器具には細心の注意を払っています。貯水槽の清掃に使う器具は、かならず貯水槽専用としてほかの清掃器具とは区別しなければならず、貯水槽以外の清掃に使用することはできません。
保管場所も専用に設け、カギをかけるなど日ごろから他の用具とは区別して扱われています。その上で、実際の清掃作業前にあらためて洗浄と消毒を行うことで、清掃作業による細菌や異物などの混入を防いでいるのです。
4-2. 断水・排水
準備が整ったら、水道の弁を閉めて断水した上で、貯水槽内に残っている水を排水します。
水抜弁を開いて自然に排水するほか、ポンプを使用する場合もあります。
4-3. 貯水槽内の清掃
排水が終わって貯水槽内がカラになれば、いよいよ清掃です。
作業員が貯水槽の中に入り、清掃前の様子を写真撮影して記録に残します。それからブラシやたわし、スポンジなどを使って洗浄していきます。
あまり汚れていない場合は水だけで洗浄することもあるようですが、洗剤が必要であれば貯水槽清掃専用の洗剤を使用します。また、ときには高圧洗浄機なども動員して、槽内の水アカ、バクテリア、サビなどを確実に除去していきます。
槽内がすっかりきれいになったら、洗浄後の水を完全に排水・拭き取りし、清掃後の様子を写真撮影してこれも記録に残しておきます。
4-4. 貯水槽内の消毒
次に、きれいになった槽内を維持するために、塩素消毒を行います。
塩素濃度が50~100㎎/L程度の次亜塩素酸ナトリウム溶液を槽内全面に塗り、そのまま30分間放置します。その後いったん水洗いし、もう一度消毒液を塗って30分放置後にまた水洗いします。
つまり、消毒を最低2回行うわけです。場合によっては3回以上行うケースもあるようです。そして最後に、洗浄後の水をきれいに排水、拭き取りします。
4-5. 貯水槽への水張り
これで貯水槽内の清掃は終わりです。消毒後の水をすべて抜いてから30分程度待ったあと、水道の栓を開いて貯水槽に水を張ります。
もし高架水槽がある場合は、まず受水槽を先に洗浄・消毒し、その後に高架水槽の洗浄・消毒を行います。
4-6. 断水の復旧・水質検査
貯水槽に水が貯まったら、断水から復旧させてビル内の水道から水が出るようにします。そしてまた水質検査をし、残留塩素を測定、味、色、におい、にごりを見て異常がないことを確認します。
ただ、現場でできる水質検査は簡易的なものなので、あらためて専門の検査機関に厳密な水質検査を依頼するため、検体として水を採取して持ち帰るのが通例です。
その後、清掃用具などを片付けて、清掃業者は撤収します。ここまでが清掃当日の流れです。ちなみに清掃にかかる時間は貯水槽の大きさや設備によってまちまちですが、おおむね2~4時間程度、その後の消毒に1時間程度と考えていてください。
4-7. 後日:報告書の作成・提出
後日、水質検査の結果を含めた清掃の報告書が業者から送られてきます。
内容は主に、以下のようなことが書かれているので、問題がないか確認しましょう。
- 清掃作業日、作業時間、断水時間
- 清掃作業の監督者、作業者の名前
- 貯水槽の点検結果
- 清掃前後の槽内の写真
- 水質検査結果
もし水質に問題があれば、ただちに断水してビルの利用者にその旨を告知し、保健所に連絡して指示を仰いてください。また、貯水槽に亀裂や破損などがあれば、修理を手配する必要もあります。
ここまでの確認・対応が、ビルオーナーや管理担当者の責任ですので、怠らずに行ってください。
5. 貯水槽についてビルの管理者がすべき清掃以外の2つの検査義務
実は、貯水槽についてビルオーナーや管理担当者に義務付けられているのは清掃だけではありません。
給排水設備全体の維持管理と、水質検査もまた法律で定められた義務なのです。その概要を表にまとめましたので、まずは以下を見てください。
【貯水槽に関する点検・検査義務】
法令 |
建築基準法第12条 |
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法) |
---|---|---|
概要 |
不特定多数の人が利用するビルを安全で衛生的に保つために、ビルのオーナーや管理者はビル自体やその設備を定期的に点検し、管轄する行政機関に報告しなければならない |
不特定多数の人が利用するビルの衛生環境を保つために、ビルのオーナーや管理者は厚生労働省が定めた水質検査や清掃を行い、基準に適合する水質や環境を保たなければならない |
点検内容 |
受水槽や高架水槽、加圧給水配管の設置場所が適正か、運転の異常、腐食・漏れなどはないか |
・飲料水 の水質検査 |
点検頻度 |
おおむね6か月~1年(特定行政庁による) |
6か月以内ごとに1回 |
報告先 |
特定行政庁 |
なし |
では、それぞれ説明しましょう。
5-1. 貯水槽に関する定期検査報告(建築基準法第12条)
貯水槽自体の点検と報告を義務付けているのは建築基準法第12条です。
その主旨を簡単にいうと、「不特定多数の人が利用するビルを安全で衛生的に保つために、ビルのオーナーや管理者はビル自体やその設備を定期的に点検し、管轄する行政機関に報告しなければならない」という内容です。
この定期検査報告制度は「12条点検」とも呼ばれ、その点検対象は以下の4つです。
- 建物自体や敷地
- 建築設備
- 防火設備
- 昇降機(エレベーターなど)
実はこの「建築設備」の中に、「給水設備」のひとつとして貯水槽が含まれているのです。
12条点検では「受水槽や高架水槽、加圧給水配管の設置場所が適正か、運転の異常、腐食・漏れなどはないか」を点検し、6か月~1年ごとに自治体などの行政機関に報告しなければなりません。
これについては、別記事「建物の安全を点検する「定期報告」制度:その点検内容と報告方法とは」で詳しく説明していますので、そちらも参照してください。
5-2. 貯水槽の水質検査(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)
水質検査は、「貯水槽の」というカテゴリーではなく、「飲料水」として行うことが義務付けられています。
該当する法律は、建築物における衛生的環境の確保に関する法律、という長い名称のもので、略して「ビル管法」「建築物衛生法」などとも呼ばれています。
その内容を簡単にいえば、「不特定多数の人が利用するビルの衛生環境を保つために、ビルのオーナーや管理者は厚生労働省が定めた水質検査や清掃を行い、基準に適合する水質や環境を保たなければならない」というもので、管理する水は以下の3種類に分けられています。
- 飲料水
- 雑用水(水道水以外の水を、散水、修景、清掃、水洗便所の用に供するもの)
- 排水
貯水槽の水も、飲料水としての基準に適合しているかどうかを定期的に検査しなければならないわけです。
この法律のくわしい内容については、別記事「ビル管法とは?対象となるビル、検査項目など基本知識を簡潔に解説」で、また水質検査の基準については別記事「水質検査とは?ビル管法における水質検査の必要性と進め方を徹底解説」にくわしく解説がありますので、ぜひ見ておいてください。
6. 貯水槽清掃を請け負う業者と料金
ここまでで、貯水槽の清掃についてビルオーナーや管理担当者が知っておくべきことはほぼ説明しました。
最後にもうひとつ、貯水槽の清掃を業者に依頼する際に知っておいたほうがいいことをお伝えしておきましょう。それは、「清掃を請け負ってくれるのはどんな業者か」と「清掃料金の相場」です。
6-1. 清掃を請け負う業者
貯水槽の清掃を請け負ってくれるのは、主にビルメンテナンス業者です。
ビルのメンテナンスを総合的に請け負う業者であれば、清掃だけでなく、水質検査や貯水槽自体の点検も行ってくれることも多いので効率的だと言えるでしょう。
現在ビルやマンションのメンテナンスを依頼している業者があれば、そこに「貯水槽の清掃はしてもらえるか」と聞いて見積もりをとってもいいですし、同業者の口コミやインターネットなどでビルメンテナンス業者を探してもいいでしょう。
◎「建築物飲料水貯水槽清掃業」の登録を受けている
◎費用が明確
◎多くの実績がある
◎口コミでの評判がよい
◎事前にていねいな説明がある
6-2. 貯水槽清掃の料金相場
貯水槽の清掃料金は業者によってまちまちですが、参考としてだいたいの料金相場もお知らせしておきましょう。
以下は、インターネット上に費用を明示している業者の料金例です。
業者 |
清掃料金 |
備考 |
---|---|---|
A社 |
<受水槽>10㎥まで:5万円 <水質検査>飲料水11項目:6,000円 |
|
B社 |
<貯水槽>10㎥まで:5万円 <水質検査>項目により6,000~1万円 |
マンション・アパートの場合 |
C社 |
<貯水槽>10㎥まで:3万8,000円 <水質検査>簡易10項目:3,000円 |
これらを参考に、何社か相見積もりをとって納得いくところに依頼するようにしてください。
まとめ
いかがでしたか?貯水槽の清掃について、知りたいことがすべてわかったかと思います。
では最後に、記事の要点を振り返ってみましょう。
◎貯水槽の清掃は法的な義務
- 水道法
- 水道法施行規則
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)施行規則
によって定められている
◎貯水槽の清掃を怠ると、最高100万円の罰金
◎貯水槽の清掃は1年以内に1回以上、定期的に行う
◎ビルオーナーや管理担当者は、ビルメンテナンス業者に清掃を依頼する
以上のことを踏まえて、あなたが適切に貯水槽の清掃・管理を行えるよう願っています!
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