消防設備点検は、消火器具や避難器具などの消防設備等が設置基準に基づき設置されているかを正常に機能するかを確認する点検です。
点検内容は消防法によって定められていて、建物の所有者、管理者、占有者が定期的に点検を実施して、その結果を消防署に提出しなければなりません。
目次
1.消防点検は必ず行う
消防設備点検は必ず行う必要があります。
なぜなら消防法により定期的に点検を行うことが定められているからです。
建物に取り付けられている自動火災報知器や排煙設備などの消防設備の不備により、避難や初期消火が遅れて被害が拡大した事例は数多く存在します。
定期的に検査を行わないといつの間にか機能が損なわれていて、いざという時に作動しないということが想定されます。
万一の時に確実に作動ためにも法令に従った継続的な点検が必要になります。消防設備点検は必ず定期的に実施しましょう。
1-2.点検の回数と内容
消防設備点検は6ケ月ごとに行う機器点検と1年に1回行う総合点検があります。
“機器点検(6ケ月に1回行います)”
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機器点検では外観点検と機能点検を行います
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外観点検では、消防設備等の適正な配置、損傷の有無、その他外観から判断可能な事項の確認を行います。
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機能点検では消防用設備等を簡易な操作で判断出来る事項の確認を行います。
“総合点検(1年に1回行います)”
- 総合点検では消防設備と消火設備を実際に作動させたり使用したりして異常がないかを確認するための点検を行います。
1-3.点検を行わない場合は罰則が!
消防設備点検を行わない場合は罰則があります。
この点検は法定点検であり行う義務がありますが点検会社に依頼するとお金もかかるため、可能であれば点検を行いたくない方もおられるようです。そのため点検は行わなくてもいいか、行わないときはぺナルテイ(罰則)があるか?という質問がよくあります。
わたしたちはこの質問には罰則があります。と回答しています。
消防設備点検を行わない場合は消防法第44条第7号の3、45条第3号により以下の罰則が適用されます。
・点検結果の報告をせず、又は虚偽の報告をした者には30万円以下の罰金又は拘留が科されます。
・その法人に対しても上記の罰金 が科されます
その他にも万が一の火災時に消火機器や警報設備が正常に作動しなかった場合、建物の所有者が罰せられることになっていますので消防設備点検は必ず実施してください。
2.消防設備点検の検査は5項目
消防設備点検の検査内容は以下の5項目です。
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「消火設備」
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「警報設備」
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「避難設備」
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「消防用水」
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「消火活動上必要な設備」
※設備については「防災設備とは?その種類や設置基準、法で定められた点検義務を全解説」でも解説しています。
2-1.消火設備
消火設備とは、火災が発生した際に消防隊が火災現場に到着するまでの間の初期消火に使う設備で、
スプリンクラーのように自動的に水を噴射するものや消火器などのように手動で操作を行うものがあります。
2-2.警報設備
警報設備とは、火災が発生したことを通報するために設置する設備で建物内の人に音で知らせたりする設備や、消防機関へ通報する設備などがあります。
2-3.避難設備
避難設備とは、火災などが発生したときの避難用の設備です。
避難設備には大きく分けて避難器具と誘導灯・標識に分けられます。避難器具は名前の通り建物の外に避難するために使う補助的な避難設備のことで、誘導灯、標識は非常口の位置や方向を示すために明かりや矢印で示します。
2-4.消防用水
消防用水とは火災が起きた時に消火に使う水のこと。
消防隊が消火活動のため、常時規定の水量が確保できるものをいいます。
2-5.消火活動上必要な設備
消火活動上必要な設備とは、火災が起きた時に高層階や地階など消防活動が難しいケースに備えて、
あらかじめ設置しておく消防用設備です。
3.誰が消防設備点検を行えるのは消防設備士と消防設備点検資格者
消防設備点検は資格を有する者が点検を行います。
点検を行うことができる資格には消防設備士、消防設備点検資格者の2つがあります。
点検を行う消防設備の種類により
消防設備士には甲種の特類及び第1類から第5類まで、乙種の第1類から第7類まで
消防設備点検資格者は1類から2類まで分かれています。
4.所有者が消防設備点検を行うためにすべき3つのこと
建物の所有者等が消防設備点検を行うには
1.「点検会社を探す」
2.「点検のための資料の提供」
3.「報告書にハンコを押す」
の3つのことを行う必要があります。それぞれを順番に説明していきます。
4−1.点検会社を探す
消防設備点検を任せる点検会社を探します。
消防設備点検は建物利用者の安全を守るための大切な調査です。ビル等の設置している場所や設置設備は一つとして同じものはなく千差万別です。
点検会社を選ぶに当たり費用は大切な要素ですがそれ以上に安心して任せることが大切な要素だと思います。ここでは20年以上の経験をもとに後悔しない点検会社を選ぶための3つのポイントを順番に説明していきます。
4-1-1.年間200件以上の豊富な経験と実績がある会社を選ぶ
点検会社の重要な選び方の1つとして過去の実績が挙げられます。
実績が多いということは培ってきたノウハウも豊富と判断できるため比較的安心して任せることができるでしょう。
どのような建物でもしっかり対応するには少なくとも年間200物件以上の経験のある点検会社を選ぶことがトラブルなく行うための目安です。
多くの点検を実施しているということはリピーターのお客様も多いと思われますので信頼されている証でもあります。
4-1-2.社歴10年以上と従業員数20名以上の信用のある会社を選ぶ
ホームページやチラシ等だけ見ても信用のある会社か責任を持って点検を行ってくれる会社かなかなか判断がつかないものです。
よく当社にもお客様から「今まで小さな会社に点検を任せていたが急に連絡が取れなくなって困っている」
と相談があります。毎年継続して点検を依頼したい、電話をかけても連絡が取れにくくて困る・・・
このようなことで困らないためにも社歴の長い会社のほうが安心です。
もちろん、社歴の浅い会社でもきちんと調査をしてくれるところはありますが、それを判断することはお客様にはできません。長く営業しているということはそれだけ頼りにされている、信頼できる証でもあります。
少なくとも10年以上の社歴がある会社や20人以上の従業員がいる会社を選ぶことが重要です。
4-1-3.不良箇所の改善提案ができる会社を選ぶ
点検時に不良箇所が判明した場合、改修、交換などを行う必要があります。
報告書提出と同時に必要な改修工事を提案を行うことができる点検会社を選びましょう。
4-2.必要書類の準備
点検会社を決定したら次に点検の準備を行います。
点検をスムーズに行い、報告書を作成するためには建物の資料が必要となります。
検査日の1週間前までに資料を点検会社までお送りいただきますとスムーズに点検を行うことができます。
4-2-1.初回の場合に必要な資料
点検が初回の場合は一から報告書を作成しなければなりません。
“点検が初回の場合の必要書類”
- 各消防設備の設置届(消防設備の数量や設置の位置が記載しています)
4-2-2.2回目以降に必要な資料
2回目以降の場合は少なくとも一度点検を行い報告書の保管があるはずです。
新たな点検会社に依頼する場合はその報告書を資料として提供してください。
“点検が2回目以降に必要な書類”
- 消防用設備等点検結果報告書(前回実施分)
4-3.報告書にハンコを押す
調査が終わると調査員が1週間程度で消防用設備等点検結果報告書を作成します。
作成後報告書をお送り致しますのでハンコを押し返送してください。
防火対象物の所在地を管轄する消防署長へ点検結果の報告書を点検者が提出します。
※消防用設備等点検結果報告書は消防署へ2部提出し、1部(副本)返却されますので台帳に綴り事務所で保管してください。
・特定防火対象物 →1年に1回提出します
・非特定防火対象物→3年に1回提出します
5.点検の費用相場
点検費用は点検会社により大きく変動します。
以前は設備×単価の積み上げ式で金額を算定していましたが現在は人工計算を行うところが多くなってきました。
費用の目安として下記に当社の価格表を掲載していますので点検会社を決めるための参考にしてください。
○標準設備は消火器・誘導灯・避難器具・連結送水管・自火報とした場合
※上記以外の設備がある場合は別途費用がかかる場合があります。
○マンションの消防設備点検は1日で完了とし、予備日を設けないものと致します。
※大規模マンションの場合は除く
○上記の価格には点検・報告書作成まで含んでいます。
○上記価格は東京都23区内、大阪市内の場合です。他エリアの場合は別途エリア外費用が必要です。
○作業車の駐車場所の確保をお願いしております。駐車場がない場合は別途駐車場代が発生致します。
○消防署への提出代行を行う場合は別途費用が必要です。
○点検前の「点検のお知らせ」等の張り紙、投函等を行う場合は別途費用が必要です。
6.点検対象の建物とは?
消防法で必要な消防設備が設置されている場合には、建物の規模に関わらず、点検・報告が必要となります。
以下の4つの条件のいずれかに当てはまる建物は「消防設備士」「消防設備点検資格者」の有資格者による点検対象となります。
それ以外の建物の場合は防火管理者などの関係者が行うことも出来ますが、確実な点検を行う為に有資格者に依頼する方が良いでしょう。
①延べ床面積が1000㎡以上の特定防火対象物(デパート、ホテル、病院など)強調ブロックは特に強調して表現したい際にご利用ください。
②延べ床面積が1000㎡以上の非特定防火対象物で消防長又は消防署長がしたもの(工場、事務所、倉庫、共同住宅など)
③特定用途(不特定多数の人が利用する)が3機以上の階、又は地階にある
④屋内階段(避難経路)が一つ
7.消防設備の取替事例
消防設備は火災などいざというに作動しなければ大惨事にもつながりかねません。
そのためにも消防設備ごとに耐用年数や交換基準などで一定使用年数が決められています。建物を安全に利用するためにも早めの交換を行うようにしましょう。
7-1.消火器取替え
消火器の耐用年数は8~10年です。使用期限を過ぎた消火器は破裂による人身事故の危険があります。
放置せず速やかに新しい消火器に取り替えてください。特に、腐食、キズ、変形などがみられる消火器は、たとえ使用期限に達していなくても直ちに交換してください。
(例)蓄圧式10型消火器 破棄費用込み @5,500円
消火器の期限や確認方法については「消火器の期限は10年?事故を未然に防ぐために知るべき確認方法」で解説しているのでご確認ください。
7-2.非常警報用バッテリー取替え
非常警報設備は、火災をサイレン音で知らせる装置です。
バッテリーの容量不足により正しく作動しない場合、逃遅れなどの原因となり被害が拡大する恐れがありますので、交換基準(4~6年)に沿って取替えましょう。
7-3.誘導灯用バッテリー取替え
停電時に適正に誘導灯を点灯させるためのバッテリーの寿命は、4年~6年です。
バッテリーの容量不足などが発生した場合、既定の時間誘導灯を点灯させることができなくなりますので交換基準に沿って取替えましょう。
7-4.受信機バッテリー取替え
受信機は電気室、警備室、コントロール室などに設置されていて、何処で発砲したかが分かるシステムです。
バッテリー不足になるとシステムが上手く機能せず対応が遅れてしまうことになりますので、交換基準(4~6年)に沿って取替えましょう。
7-5.誘導灯用蛍光灯取替え
誘導灯の蛍光灯が切れていると非常時に避難経路が分からず、逃遅れなど被害が拡大する可能性がありますので交換基準に沿って取替えましょう。
交換基準は、直管形蛍光ランプは1~2年、コンパクト形蛍光ランプは半年~1年、LEDはメーカーの公表値に従って下さい。
交換時期については「停電の時でも困らない為に「誘導灯の交換時期と方法」4つのポイント」で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
8.まとめ
・消防設備点検は機器点検は6ヶ月に一度、総合点検は一年に一度行うことが定められています。
・消防設備点検は消防設備士などの有資格者が行う必要があります。
・点検対象は、消火器や感知器、屋内・屋外消火栓設備、排煙設備など多くの設備がありますが
実際に点検するのはその建物に設置されている消防設備のみです。
建物により設置されている消防設備は全く違います。
・点検結果の報告をしない場合又は虚偽の報告をした者には30万円以下の罰金又は拘留が科されます。
法定点検ではありますが建物を利用している人々の安全を守るためにも継続的に実施してください。
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