管理者

「ビルには特定建築物定期調査が必要と聞いたけれど、どんな調査かわからない」
「自分が管理しているビルにも調査は必要なのだろうか?」

この記事を開いたあなたは、そんな疑問を抱いていませんか?

「特定建築物定期調査」をひとことで説明すると、「建築基準法第12条に定められた建物についての安全点検・報告の制度」です。

多くの人が出入りするビルなどの建物には、安全面で問題がないかを定期的に調査点検することが義務づけられているのです。

もしこの点検を怠ると、ビルの老朽化や設備の故障に気づかず放置して、壁が崩落するなど危険な状態を引き起こしてしまう可能性があるため、所有者や管理者はかならず調査報告を行わなければなりません。

この記事ではそんな重要な制度について、以下のことをくわしく説明していきます。

◎特定建築物定期調査の概要、目的、成り立ち
◎誰が・何を・いつ・どこに・どうやって報告するのか
◎調査が必要な「特定建築物」とは何か

また、以下のことについても解説します。

◎定期調査の点検項目
◎調査の流れ
◎調査費用の相場

この記事を読めば、特定建築物定期調査について知りたいことがわかるはずです。

あなたが建築基準法に従って正しい定期調査ができるようになることを願っています。

定期報告は
所有者・管理者の義務です

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(マンション)の定期報告の年です。

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1. 特定建築物定期調査とは?

調査

「特定建築物定期調査」とは何でしょうか?

その意味、どんな調査かについてくわしく説明していきましょう。

1-1. 建築基準法第12条による建物の安全点検・報告制度

「特定建築物定期検査」をひとことで説明すると、「建築基準法第12条に定められた建物とその敷地についての安全点検」です。

大勢の人が出入りする建物や事業所については、所有者や管理者が定期的に決められた点検を実施し、特定行政庁に報告する義務が課せられているのです。

12条の条文を要約すると、以下のような内容になります。

特定建築物の所有者は、建築物の敷地、構造及び建築設備について、

国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者その状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

つまり、「特定建築物」の持ち主は、

  • 建物の敷地、構造
  • 建物の設備

について、国が定める検査項目を、一級建築士などの資格を持つ人に定期的に調査してもらって、「特定行政庁」に定期的に報告する義務がある、というわけです。

具体的には、以下の4項目の検査が定められています。

◎特定建築物(建物そのものと敷地)
◎建築設備
◎防火設備
◎昇降機

このうちの「特定建築物」についての検査を「特定建築物定期調査」と呼んでいるのです。

ちなみに4項目全体の検査は、「12条点検」「定期報告制度」などとも呼ばれています。

この「特定建築物」とは、法律で定められた一定の基準に当てはまる建物のことで、このあとの「2 調査が必要な「特定建築物」とは?」でくわしく説明しますので、参照してください。
また、「特定行政庁」とは、建物に関する建築確認や違反の是正命令などを行うことができる「建築主事」のいる行政機関のことです。

これについても、「3-3 どこに:特定行政庁」にくわしい説明と「特定行政庁一覧」を掲載しますので、そちらを確認してください。

1-2. 調査の目的

特定建築物定期調査の目的は、「建物を利用する人の命や健康を守るために、建物の安全を保つこと」です。

建築基準法の第1条には、こう記されています。

<建築基準法>

第一条
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

12条点検も、それに含まれる特定建築物定期調査も、この第1条の目的にのっとって行われるものです。

ちなみに以前の12条点検では、以下の3項目のみが義務づけられていました。

◼️建物自体や敷地
◼️建物の設備(照明や給排水などの設備)
◼️エレベーター

が、近年の福山でのホテル火災や長崎のグループホーム火災、福岡の診療所火災など、大きな建物で多数の死者が出たことを踏まえて、2016年からは、

◼️防火設備

の定期点検が追加されました。

建物をより安全に保つために、12条点検全体も特定建築物定期調査もつねにその点検内容を見直し、改良されているのです。

1-3. 制度の成り立ちと改正の経緯

そもそも建築基準法自体が施行されたのは昭和25年(1950年)のことです。

大正時代の「市街地建築物法」を全面改正して作られ、第二次世界大戦後の復興期に安全な建物を建てるための基準を定めたものでした。

が、当初は特定建築物定期調査を含む定期報告制度はまだ義務化されておらず、「特定行政庁側から報告を求めることができる」という意味の条文があるだけでした。

定期的な調査と報告が義務づけられたのは、昭和45年(1970年)の法改正からです。

しかし、定期調査報告の義務化後にも、建物で大きな事故が起きることが何度もありました。
その反省を踏まえて、制度にも大きな改正を行った歴史があります。

その主なものをあげてみましょう。

◾️平成18年(2006年)の改正
この年から、石綿(アスベスト)による健康被害を防止するため、建築物における石綿の使用が規制されました。
それに伴って、平成19年より定期調査報告書に新たに石綿に関する項目が追加され、

1)特定建築物では、吹付け石綿等についても定期調査・検査報告が必要
2)定期報告の概要は申請により閲覧可能

となりました。

◾️平成20年(2008年)の改正

平成18年の東京都内の公共賃貸住宅のエレベーターにおける死亡事故、平成19年の東京都内の複合ビルのエレベーターにおける発煙事故と大阪府内の遊園地のコースターにおける死亡事故、東京都内の雑居ビルにおける広告板落下事故など、エレベーターや建物に関する事故が立て続けに起きたことを受け、

1)定期報告の調査・検査の項目、方法、判定基準を法令上で明確化する
2)報告内容を充実させる

ように改正されました。

◾️平成28年(2016年)の改正

平成24年の福山市のホテル火災、平成25年の長崎市のグループホーム火災と福岡市の診療所火災など、多数の死者が出る火災事故が続いたことを受け、

1)定期報告の対象となる建物として、「特定行政庁の指定するもの」に「政令で定めるもの」を追加する
2)検査対象として「防火設備」を追加する
3)調査・点検をする資格者制度を見直す

などの改正を行いました。

人々の命と健康を守るために、建物の建材からエレベーター、防火設備まで幅広く見直しが繰り返されていることがわかりますよね。
特定建築物定期調査を含む12条点検とは、それほど重要なものなのです。

建物の管理者側もこのことをよく理解して、正しく点検・報告をしていきましょう。

1-4. 調査を怠るとどうなるか

では、もし定期調査報告を行わなかったり、点検を怠ったりした場合、何かよくないことがあるのでしょうか?

これには2種類のリスクがあります。

1)建物での事故や健康被害の危険性

定期的に点検調査をせずに建物を使用すると、経年劣化や破損、腐食などに気づけず放置することになり、大きな事故や健康被害につながる危険があります。

壁が崩落して人に当たったり、陥没した道路に落ちたりするかもしれませんし、木材や金属が腐食して有害物質が発生するかもしれません。
あるいは避難経路が整備されていなくて、火災や地震のときに建物から退避できない可能性も考えられます。

そんな悲劇を避けるためには、定期調査を正しく行わなければならないのです。

2)建築基準法第101条による罰則

また、特定建築物定期調査を含む12条点検を怠ったり、ウソの検査結果を報告したりすると、以下の法律により100万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

<建築基準法>

第百一条

次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。

(中略)

二 第十二条第一項若しくは第三項(これらの規定を第八十八条第一項又は第三項において準用する場合を含む。)又は第五項(第二号に係る部分に限り、第八十八条第一項から第三項までにおいて準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

ここまで至らずとも、行政側が「この建物は管理が適切でない」と判断した場合は、立入検査や指導が入ります。

そのようなことのないように、決められた時期に正しい調査報告を行いましょう。


2. 調査が必要な「特定建築物」とは?

ビル

定期調査報告制度が適用される建物は、「特定建築物」だけです。

それ以外の建物には、調査報告の義務はありません。
では、特定建築物とは何なのでしょうか?

それには2種類あります。

1)国が政令で指定する建築物
2)特定行政庁がそれぞれに指定する建築物

1)には含まれなくても2)に含まれる場合は、報告義務が生じますので注意してください。

では、それぞれが定める具体的な特定建築物の範囲を見ていきましょう。

1)国が政令で指定する建築物

国が定める特定建築物は、

◎以下の表の用途に使われる建物で、
◎その用途に使う部分の床面積の合計が200㎡以上あるもの

とされ、具体的には以下の表に該当する建物です。

用途

規模

1

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場など

・3階以上の階にあるもの
・客席の床面積が200㎡以上のもの
・地階にあるもの
・主階が1階にない劇場、映画館、演芸場

2

病院、有床診療所、ホテル、旅館、就寝用福祉施設(※別注参照)

・3階以上の階にあるもの
・2階の床面積が300㎡以上のもの
・地階にあるもの

3

体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場
(いずれも学校に附属するものを除く)

・3階以上の階にあるもの
・床面積が2,000㎡以上のもの

4

百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗

・3階以上の階にあるもの
・2階の床面積が500㎡以上のもの
・床面積が3,000㎡以上のもの
・地階にあるもの

※「就寝用福祉施設」とは、サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホーム、助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設、小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の事業所、老人デイサービスセンター、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、母子保護施設、障害者支援施設、福祉ホーム、障害福祉サービスの事業所を指します。

2)特定行政庁がそれぞれに指定する建築物

特定行政庁が指定する特定建築物は、それぞれ行政に確認する必要があります。

多くの特定行政庁ではホームページなどでその特定建築物に含まれる建物の範囲を公開していますので、確認してください。

例えば東京都の場合は、以下のサイトで確認できます。

東京都都市整備局「定期報告対象建築物・建築設備等及び報告時期一覧」

これによると、国の規定に加えて、

◎学校、学校に付属する体育館で、床面積が2,000㎡以上のもの
◎5階建以上で延べ床面積が2,000㎡以上の事務所やそれに類するもので、3階以上の階にあって床面積が1,000㎡以上のもの

などが追加されていますので、これに該当する建物でも定期調査報告が必要になります。

特定行政庁のリストとそれぞれの担当窓口・連絡先は、国土交通省の「特定行政庁の所在地・所管部(局)課・電話一覧」にまとめられていますので、以下のリンク先で確認してください。

国土交通省「特定行政庁の所在地・所管部(局)課・電話一覧」


3. 定期調査の5W1H:誰が・何を・どこに・いつ・どうやって報告するのか

5W1H

いよいよ定期調査報告のくわしい内容について説明しましょう。
これについては、5W1H風に整理するとわかりやすいと思います。

ひとことで言えば、

◎誰が:特定建築物の所有者・管理者
◎何を:特定建築物
◎どこに:特定行政庁
◎いつ:1年ごと、3年ごとなど定期的に
◎どうやって:一級建築士などに検査を依頼し報告する

というのが制度の概要です。

この章ではこの5W1Hについて、ひとつずつ解説していきます。

ちなみに、この「どうやって=How」の中に「どんな点検をするのか」も含めることができますが、点検項目が細かく専門的なので、この章とは別に「4 定期調査の点検項目」でわかりやすく説明しますのでそちらも参照してください。

3-1. 誰が:特定建築物の所有者・管理者

定期調査報告を行う義務があるのは「特定建築物の所有者または管理者」です。

建築基準法第12条には、

特定建築物(中略)の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第三項において同じ。)は、(中略)特定行政庁に報告しなければならない。

と記されています。
つまり所有者と管理者が同じ人の場合はその人が、異なる場合は管理者が報告義務を負うのです。

3-2. 何を:特定建築物

次に、定期調査報告が必要な建物ですが、これは前章「2 調査が必要な「特定建築物」とは?」でくわしく説明済みですので省略します。
該当するか知りたい場合は、建物がある地域を管轄する特定行政庁で確認してください。

3-3. どこに:特定行政庁

定期調査を行ったら「特定行政庁」に報告が必要です。

この「特定行政庁」とは、ひとことで言えば「建築主事が置かれている地方自治体とその長」のことで、これに含まれるのは、以下の自治体です。

◎すべての都道府県
◎政令で指定された人口25万人以上の市
◎その他建築主事を置いている市区町村

建築基準法では、特定行政庁について以下のように定義しています。

<建築基準法>

第二条 三十五 特定行政庁

建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。

つまり、建築主事とは建築基準法にもとづいて建築確認、検査、違法建築の是正命令などを行う行政機関とその職員ということです。

  • すべての都道府県
  • 政令で指定された人口25万人以上の市

には建築主事を置くことが法律で義務づけられているので、これらは特定行政庁であるということになります。

また、人口25万に満たない市区町村であっても、都道府県知事の同意のもとに建築主事を置くことができ、その場合は特定行政庁となります。

もし、自分のビルが建築主事のいる市区町村にある場合は、都道府県ではなく市区町村の方を特定行政庁として定期調査報告をします。

特定行政庁の一覧は、全国建築審査会協議会の「特定行政庁一覧」で確認できます。

それぞれの連絡先などを知りたい場合は、国土交通省の「特定行政庁の所在地・所管部(局)課・電話一覧」を参照してください。

全国建築審査会協議会「特定行政庁一覧」
国土交通省「特定行政庁の所在地・所管部(局)課・電話一覧」

3-4. いつ:1年ごと、3年ごとなど定期的に

定期調査報告を行う時期ですが、それについて国では大まかな基準しか定められておらず、特定行政庁ごとに委ねられています。

まず国の規定は以下です。

点検の種別

報告時期

建築物

おおむね6ヶ月〜3年までの間隔をおいて、特定行政庁が定める時期

建築設備
昇降機など
防火設備

おおむね6ヶ月〜1年までの間隔をおいて、特定行政庁が定める時期

この範囲内で、各特定行政庁が細かい報告時期を定めています。

例えば東京都の場合、報告時期・報告周期は以下の通りです。

点検の種別

報告時期

建築物

劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、ホテル、旅館、百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売り場、物品販売業を営む店舗、地下街

毎年11月1日〜翌年1月31日
(1年ごと)

それ以外の特定建築物

平成31年5月1日〜10月31日
(3年ごと)

建築設備

毎年(前年の報告日の翌日から1年以内)

※遊戯施設などは6ヶ月ごと

防火設備

昇降機

特定建築物の範囲とあわせて、各特定行政庁に確認してください。

3-5. どうやって:一級建築士などに検査を依頼し報告する

最後に定期調査報告の方法ですが、基本的には資格を持った専門家に依頼して、調査と報告をしてもらいます。
というのも、この調査と報告には建築物に関する知識が必要で、素人には行えません。

建築基準法第12条では、以下の3つの資格のいずれかを持った人だけが行うことができると定められています。

◎一級建築士
◎二級建築士
◎建築物調査員資格者証の交付を受けている者

(昇降機の定期検査の場合は、昇降機等検査員資格者証の交付を受けている者)

一般的には、定期報告を請け負ってくれる検査会社に依頼して、そこに所属している上記3資格のいずれかを持つ人に点検してもらう場合が多いようです。


4. 定期調査の点検項目

点検

前章で説明したように、定期調査報告は資格を持った専門家に依頼するため、建物の所有者・管理者は細かい点検内容を知らなくてもかまいません。
とはいえ、「何も知らずに任せっきりは不安」という人も多いでしょう。

そこでこの章では、どんな調査をするのかについて、主な点検項目を紹介します。
「別に知らなくても大丈夫」という人は、読み飛ばしても結構です。

また、この記事では12条点検のうちの「特定建築物定期調査」についてのみ解説しますが、「12条点検全体について知りたい」という場合は、別記事「12条点検とは?詳しい点検項目から業者に依頼する費用まで全解説」にくわしく解説していますので参照してください。

まず点検する項目は以下の5つです。

点検の対象

点検項目数

点検項目

特定建築物

5項目

・敷地および地盤
・建物外部
・屋上および屋根
・建物内部
・避難施設・非常用進入口など

検査方法は、

◎目視
◎設計図の確認
◎巻尺による測定
◎テストハンマーによる打診

などで行います。

また、検査の結果問題がなければ特定行政庁にその旨報告して終わりですが、もし問題があった場合は、点検を担当した資格者からビルの管理者側に「ここは改善の必要があります」と指摘されます。

そのアドバイスを受けたら、ビルの管理者はなるべく早く問題点を改善し、「改善完了報告書」を特定行政庁に提出する必要があります。

では、5項目それぞれの点検内容をさらにくわしく見ていきましょう。

4-1. 「敷地および地盤」の調査

建物の敷地や、その地盤についての点検があります。

具体的には、主に以下のような検査項目について点検されます。

◎建物周辺に陥没がないか、地盤沈下による傾斜などはないか
◎排水管が詰っていないか、汚水があふたり悪臭を発するなど衛生上問題がないか
◎道路までの避難通路が確保されているか、避難通路上に障害物がないか
◎ブロック塀やコンクリート塀の構造に、ひび割れや傾斜が生じていないか
◎擁壁などに著しい傾斜やひび割れがないか
◎屋外機器本体(配電塔や電力等引込柱、外灯など)に、著しい錆や腐食が発生していないか など

おおまかに言えば、地面、排水管、避難経路、塀など、敷地内で建物自体を除いた部分を幅広く点検する調査です。

4-2. 「建物外部」の調査

次に、建物の外側を点検します。

点検されるのは以下のようなポイントです。

◎基礎部分に地盤沈下に伴うひび割れなどがないか
◎地盤沈下により土台(木造に限る)が劣化し、危険ではないか
◎外壁(躯体など)の目地モルタルに著しい欠落がないか、ブロック積みがずれたり崩れたりしていないか、鋼材に著しい錆や腐食などがないか
◎外壁タイルなどに著しいひび割れや浮き、剥落などがないか
◎窓サッシなどが腐食や緩みにより変形していないか など

つまり、建物外部といっても外壁だけではなく、窓枠や土台なども含む、外側から見える全体のチェックです。

4-3. 「屋上および屋根」の調査

続いて、建物の屋上や屋根の点検項目は以下です。

◎屋上にひび割れや反りあがりがないか、歩行上の危険はないか、伸縮目地材が欠落して部分的に植物が繁茂していないか
◎屋上まわりに著しいひび割れや剥落がないか
◎屋根ふき材に割れがないか、緊結金物に錆など著しい腐食がないか
◎高架水槽などの機器本体に著しく錆が発生していないか、接合部に錆が発生してぐらついていないか など

屋上や屋根はもちろん、そこに設置されている貯水槽などの機器も含めて検査されます。

4-4. 「建物内部」の調査

ここまでが建物の外側の調査でしたが、次に建物の内側も点検します。

その点検内容は以下の通りです。

◎内壁躯体に割れやズレ、著しい錆や腐食がないか
◎床躯体に割れやズレ、著しい錆や腐食がないか
◎天井の部材・仕上材に浮きなどの劣化・損傷や剥落がないか
◎照明器具などに著しい錆・腐食やゆるみ、変形などがないか、地震などで落下しないか
◎居室内で採光の妨げとなる物などが放置されていないか
◎換気設備が作動しているか など

内側の壁、床、天井といった建物そのものに加えて、照明や換気設備なども確認します。

ちなみに給排水設備や防火設備などについては、同じ12条点検の中でも別の検査、「建築設備定期検査」「防火設備定期検査」で行います。

4-5. 「避難施設・非常用侵入口など」の調査

最後に、災害時の避難用の施設についても調べます。

点検項目は以下のようなものです。

◎避難の支障となる物が放置されていないか、避難経路の幅員が確保されているか、扉の開閉に支障はないか
◎手すり本体に著しい錆や腐食が発生してないか、避難バルコニーの足元が腐食しグラついていないか
◎階段の通行に支障となる障害物が置かれていないか、可燃物が集積されて放置されていないか
◎排煙設備が正常に作動するか、防煙垂れ壁に亀裂・破損や変形などがないか など

いざというときに避難の妨げになるものはないか、危険がなく逃げられるかを全般的にチェックする検査です。

ここまで、特定建築物定期調査5項目のあらましを説明しました。
が、実際の点検項目はさらに細かく規定があります。

くわしく知りたい場合は、以下のリンクで確認してください。

国土交通省 告示「建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件」


5. 調査を専門業者に依頼する場合の流れ

ステップ

実際に定期調査を検査会社に依頼する場合はどんな流れになるのでしょうか。

それは以下の通りです。

1)検査通知書が届く:検査時期が来ると、特定行政庁から検査通知書が届きます。
2)検査会社を探す
3)検査に必要な書類を準備:建築物に関する資料を用意し、検査日の1週間前ごろまでに検査会社に送るといいでしょう。

<初回の検査の場合>

①確認済証
②検査済証
③建築平面図
④設備図面(消防設備等)
⑤面積記載図
⑥消防設備点検報告書

<2回目以降の検査の場合>

①前回報告書
②平面図
③消防設備点検報告書

4)検査:検査日に検査会社が建物を訪れて検査をします。
5)検査会社が報告書を作成:1週間程度で検査会社が報告書を作成し、依頼者に郵送してきます。
6)報告書に押印・返送:内容を確認して問題なければ、押印をして検査会社に返送します。
7)検査会社が報告書を特定行政庁に提出

基本的にビルのオーナーや管理者がすることは、

2)検査会社を探す
3)検査に必要な書類を揃える
6)検査会社が作成した報告書を確認、押印して返送する

の3点だけです。

経験豊富な検査会社に依頼すれば、あとはお任せするだけなので難しいことはないでしょう。

ビル管理会社の詳細な選び方は「信頼できるビル管理会社を見極める方法と全国のおすすめ管理会社6選」でも解説していますのでぜひご一読ください。


6. 調査費用の相場

費用

最後に、定期調査報告を外部に依頼する際の費用の相場も知っておきましょう。

調査報告を請け負ってくれる会社としては、

◎建設会社や工務店
◎設計事務所
◎不動産管理会社
◎設備業者

などが一般的ですが、その検査費用はまちまちです。

初めて依頼する場合は、何社か相見積もりをとって検討するといいでしょう。
ここでは例として、東和総合サービスの価格表をおしらせします。

ひとつの基準として参考にしてみてください。

延べ床面積

特定建築物定期検査

共同住宅

(マンション)

それ以外

〜1,000㎡

45,000円

40,000円

〜2,000㎡

45,000円

50,000円

〜3,000㎡

52,000円

60,000円

3,000㎡超

別途見積もり

別途見積もり


まとめ

いかがでしょうか?

特定建築物定期調査についてよく理解できたことと思います。

では最後にもう一度、記事の要点をまとめて見ましょう。

◎特定建築物定期調査とは、建築基準法第12条による建物の安全点検・報告制度

◎定期調査は、
誰が:特定建築物の所有者・管理者
何を:特定建築物
どこに:特定行政庁
いつ:1年ごと、3年ごとなど定期的に
どうやって:一級建築士などに検査を依頼し報告する

この記事を参考に、正しく定期調査報告を行えることを願っています!

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