特定建築物定期調査を行わない場合の罰則は「100万円以下の罰金」です。

特定建築物定期調査の対象となる設備の所有者には、特定行政庁から調査の通知が送付されます。
そして、もしそこで調査や報告を怠った場合、建築基準法第100条および101条に則り、100万円以下の罰金が科せられます。調査や報告を怠っただけでなく、虚偽の報告をした場合にも同様の罰則が科せられるので注意が必要です。

さらに、報告義務を怠って不測の事故や災害が起きた場合には、刑法ならびに民法によって罰せられます。裁判で悪質だと判断された場合には、執行猶予がつかずに実刑判決が下される事例も増加しています。

特定建築物定期調査は、建築基準法第12条に基づく定期報告制度の1つであり法で定められている「法的調査」ですから、必ず行なわないといけません。

しかしながら調査を行なうためには費用がかかるので、コストカットを優先して調査を行なわないビルオーナーの方もいるのは事実です。法的検査であり、建物や建物を利用する不特定多数の人々の安全を保つためにも必ず調査を行いましょう。

本記事では、特定建築物定期調査を行なわないことによる罰則と、罰則ができるきっかけとなった事故事例をご紹介していきます。建物の安全を維持していくための参考にしてください。

定期報告は
所有者・管理者の義務です

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※令和3年度は大阪・東京で「共同住宅
(マンション)の定期報告の年です。

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1.特定建築物定期調査の罰則規定【100万円以下の罰金】

特定建築物定期調査や建築設備定期検査などの、「建築基準法第12条で定められた定期報告」を行わなかった場合には罰則規定が定められています。

東京都などの特定行政庁から調査を行なうように通知が届いても定期報告をしない場合や、定期報告を行っても正確な内容の報告をしなかった場合は、建築基準法に定められた規定によって「100万円以下の罰金」が科せられることがあります。

定期報告制度には、有資格者による適切な検査の実行と、特定行政庁への報告義務があるということです。
正確な内容の報告を行わない場合の一例とは、次のようなケースがあります。

  • 調査は行なわないで報告書だけ作成する。
  • 調査の結果、破損していたり不適合なものがあっても問題なし、と報告書に記載する。
  • 決められた期限までに提出できなかったにも関わらず調査日を故意に修正した。

何度も特定行政庁からの通知があるにも関わらず定期報告を行わないで通知を無視し続けていると次のステップとして督促状・勧告状が送付されてきます。

罰則を受けるまでの流れをまとめると次のようになります。

  1. 定期報告を行わない
  2. 通知
  3. 督促状
  4. 勧告状
  5. 罰金

ただし、今のところこのような督促、勧告があるにも関わらず無視し続けた場合で、罰金の処分まで行われたというケースはよほど悪質な場合に限られているようです。

しかしながら消防設備点検のような他の法定点検と同じように法定検査を行わない違反状況で万一、火災等の事故が起きた場合は、相当な責任を負うことになります。

ここ数年の判例でも、執行猶予はつかずにいきなりの実刑判決となることが多くなっています。所有者責任として建物を利用する人々の安全を守るためにも法的検査は必ず行いましょう。

※注意
虚偽の報告を行った場合にも、同様に「100万円以下の罰金」が科せられます。


2.特定建築物定期調査の罰則規定を設けるきっかけとなった代表的な事故

特定建築物定期調査、建築設備定期検査、消防設備点検などの法的検査は建物で火災などの事故がある度にこのような悲劇を繰返さないことを目的として、定期的に法改正が行われ段階的に厳格な内容のものに変わっていきます。

ここでは罰則規定を設けるきっかけとなった代表的な事故をご紹介します。これらの事故を反面教師として法的検査を行い、安全な建物を維持していきましょう。

2-1.外壁タイル落下事故

1つ目は、外壁タイルの落下事故です。

ここ数年、外壁タイル等の落下事故が多く発生しています。例えば5階建てのマンションの5階(地上約15m)のバルコニー部分のタイルが幅1mにわたり落下しました。

落下したタイルの塊が通行人をかすめるという,一歩間違えば大事故につながりかねない状況でした。タイルが落下する場合、接着のため使用するモルタルの塊と一緒に落下することが多いため、大きな石のかたまりのような状態で落ちてきます。

通行人に当ると死亡事故など重大な事故につながります。調査を行ないリスクを回避しましょう。

2-2.避難経路での障害物による事故

2つ目は、避難経路での障害物による事故です。

ビルでの火災での死亡事故の一番の要因が逃げ遅れがあげられます。
火事が起きた時の避難通路となる階段と廊下に、自転車や荷物、書類の入ったダンボール箱などを無造作に置いているケースが非常に多く見受けられます。

火事が起きて避難するときに置かれた荷物が障害になっての逃げ遅れや、荷物があるために火を遮断するための防火扉が閉まらない等のことが起きます。

平成13年9月に歌舞伎町の「明星56ビル」火災事故でも火災自体は激しくなかったようですが、避難する人々が階段のあちこちに置かれた荷物で避難通路としての機能を失っていたため、逃げ遅れのため44人の方が死亡するという大事故につながりました。

廊下や階段などの共用部には物は置かないことを徹底してください


3.まとめ

特定建築物定期調査を行わなかったり虚偽の報告を行なった場合は、100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

特定建築物定期調査は、建築基準法第12条の法的調査です。
東京都等の特定行政庁より調査を行うよう通知が届きますが、数回通知が届いても調査を行なわない場合は督促や勧告が行われます。

それらを無視し続けると罰則を受ける可能性があります。
罰則を受けないために調査を行うのではなく、建物を利用する人々の安全を守るために所有者責任として調査を行なうよう徹底しましょう。

「特定建築物定期調査」の内容についてもっと知りたい方は当ブログ「特定建築物定期調査|これだけ分れば安心!内容と費用のポイント解説」を是非お読みください。

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