非常照明の交換を何時したか覚えていますか?
平成28年に全国で発生した建物火災件数は20964件で、死亡者は1112名、負傷者は5022名でした。いざという時の為に設置場所、交換時期などの基準を知っておくと安心ですよね。非常照明の設置は建築基準法・消防法により色々な基準が設けられています。
このブログでは、大事な建物が法律に沿ってきちんと非常照明が設置されているか、交換時期を過ぎていないか、安心できる会社を選ぶ方法などをご紹介します。是非チェックしてみてください。
目次
1. 非常照明の設置基準とは
1-1.設置義務の条件
非常照明は、マーケット・病院・劇場・ホテルなど多数人が集まる場所で、火災などにより停電した時にそこにいる人達を速やかに安全に避難できるように部屋や通路に配置するよう義務付けられています。不特定多数の人が出入りする建物や面積の大きい建物では停電時にパニックが発生したり、避難することが困難になるからです。
アラーム弁室や消火ポンプ室にも火災による停電が発生した場合の消火活動が速やかに行われるよう非常照明を設置しなければいけません。
また、増改築・大修繕などを行った場合にも設置しなければいけません。
1-2 照度の基準
非常用照明装置を点灯させ、30分間非常点灯させた状態で、床面1ルクス(蛍光灯の場合は2ルクス)以上の照度を確保する必要があります。
蛍光灯は白熱電球と違い、火災による高温で蛍光灯効率が低下するおそれがあるため、1ルクスを目標に設計してしまっては、実際の火災時に1ルクスを確保できない可能性があるためです。
- ※1ルクスとは
- 明るさを表す単位の一つです。
1-3 耐熱性の基準
非常用照明器具を30分以上点灯することができる予備電源を有すること140℃の雰囲気の中で30分以上点灯を維持できる耐熱性を有することなどが規定されています。
1-4 設置場所の条件
設置場所の条件は以下のとおりです。
- 特殊建築物
- 階数が3以上で延べ床面積が500㎡を超える建築物
- 延べ面積が1000㎡を超える建築物
- 無窓の居室を有する建築物
具体的には以下のような建物が非常照明の設置が条件づけられています。
- 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場
- 病院、診療所(患者収容所があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設
- 学校等(学校、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場など)、博物館、美術館、図書館
- 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェ、遊技場、公衆浴場、待合、飲食店な
※ただし、以下の場合は設置義務が免除できます。
・ホテル、旅館等は二つの部屋がふすまや障子などいつでも開けられる状態のもので仕切られている2部屋は避難経路に近い部屋のみ設置すればいい。ただし、仕切りを開けた状態で法定照度を確保しなければいけません。
・地下駐車場の駐車スペース、車路は通常人が出入りする通路ではないので設置の必要がありません。ただし、避難通路として使用されることがあるので、設置する方が良いでしょう。
1-5.交換時期
照明器具を含む電気設備は「適正交換時期」の8~10年での交換をお勧めします。10年を過ぎた非常灯は外観だけでは判断できない機器の劣化が進んでいますので、安全性の面からも適正交換時期での交換をお勧めします。
非常灯設備は建築基準法の保安規定として半年~1年以内の間に定期点検を行う事が義務付けられています。建築基準法に基づく点検規定は「特定行政庁」によって制定されていて、もしこれら点検業務を怠った場合は、点検報告義務違反関係者には罰金50万円など罰則を受けることになるので注意が必要です。
*通常は定期的な検査を受けていれば点検時期を逃すことや罰則が生じることはありません。
2 設置の基準に関わる法律
非常照明設置基準は以下より紹介する建築基準法と消防法により定められています。
2-1.建築基準法
建築基準法とは、建物の建築に関して、最低限守ってほしいルール(基準)のことです。具体的には2つに分かれます。
- 建築物の安全や防火と避難、健康で快適な生活など建築物の安全と衛生を確保するための規定
- 市街地環境をより良くするための規定
建築物の所有者、管理者、占有者は非常灯など昇降機以外の建築設備を資格をもつ人に定期的に点検させてその結果を特定行政庁(都道府県知事もしくは市長村長)に提出しなければいけません。
2-2.消防法
消防法とは、火災を予防し、人及び財産を保護するとともに、火災又は地震等の災害に因る被害を軽減するための法律です。設置された非常照明は点検業務が義務付けられています。
防火対象物の所有者、管理者、占有者は消防法や関連法令の基準に従い、誘導灯などの消防用設備等を設置し、定期的に点検をし、その結果を消防長または消防署長に提出しなければいけません。
3.設置の方法
3-1.自分で設置する場合
自分で行うことが出来るのは、資格の必要の無い非常灯の中の蓄電池、ランプの交換です。
また、非常灯器具自体も専用工具などがなくてもパネルの取り外しができ、バッテリーやランプの交換ができるように作られているので、比較的簡単に交換作業を行うことが出来ます。交換作業は下記の動画を参照に行ってみてください。とても分かりやすく簡単に交換方法を説明してくれているのでお薦めです。
ただし、急な電球の切れなどは、内部に故障の原因があることもあるので専門業者に依頼される方が良いでしょう。点検の報告で問題があった場合は点検業者に依頼し、交換作業を行ってください。
非常灯器具の交換(本体の交換)には、以下の資格が必要です。
- 第四類の甲種消防設備士若しくは乙種消防設備士又は第七類の乙種消防設備士免状の交付を受けている者であって、電気工事士免状の交付を受けている者
- 第一~三種電気主任技術者免状の交付を受けている者
- 第二種消防設備点検資格者
3-2.業者を選ぶ基準
① 豊富な経験と実績がある会社を選ぶ
設置している設備の種類・設備数・設備場所は建物によって千差満別です。どのような設備が設置していてもしっかり対応するには少なくとも年間200物件以上の実績のある会社がトラブルが少なく作業を行うことが出来ます。
② 信用のある会社を選ぶ
ホームページやチラシ等だけ見ても信用があるか責任を持って作業を最後まで行ってくれるかよく分からないものです。
よく、当社にもお客様から「今まで小さな会社に任せていたが急に連絡が取れなくなって困っている」と相談があります。
このように困らないように少なくとも10年以上の社歴がある会社や10人以上の従業員がいる会社を選ぶことも重要なポイントです。
③ 追加料金が必要ない会社を選ぶ
安心できる会社は常に明瞭会計をします。あとで追加費用が必要な場合は任せるのに不安です。
見積書を取った際には見積もり金額以外の費用が必要か確認をとることが重要です。
4.注意点
⑴認定証票が貼付してある商品を使用しましょう。
(社)日本照明器具工業会(現日本照明工業会)の自主評定に合格した物には認定証票を貼付しているので貼付されている物を使用しましょう。自首評定の目的は建築基準法に規定された非常照明器具について、関連法規を遵守しかつ細部に亘って補完した技術基準を制定し、技術基準に適合していることを評定することで建築基準法に合致した製品を安定して供給することです。
建築基準法では非常用照明器具を30分以上点灯することができる予備電源を有すること、140℃の雰囲気の中で30分以上点灯を維持できる耐熱性を有することなどの決まりがあり建築基準法改定に依る非常用照明器具製作工場 としての認定を受けている工場で生産された製品に認定証書が貼付されます。
⑵LED非常照明器具の使用が可能になりました。
建築基準法で定められている非常用照明器具は「白熱灯」と「蛍光灯」に原則的に限られます。(JIL5501-2009)さらに電気用品安全法や労働安全衛生法をクリアする必要があり「LED」は非常灯光源として使用することが出来ませんでしたが、建築基準法に基づく「国土交通大臣認定」によってLED非常用照明器具のリリースが可能になりました。
⑶交換は専門業者に頼みましょう。
非常照明器具本体の交換には資格が必要です。電球など簡易な自分で対応できる範囲で対応して解決しない場合は内部に問題があり原因が簡単に分からない場合があるので、専門の業者に依頼しましょう。
⑷非常照明と誘導灯の違い
非常用照明は、避難する為の通路に照度を確保する為の設備で、誘導灯は避難する方向を示す設備です。誘導灯の明るさで非常用照明の照度を確保することは不可ですので、互いを別の設備として計画しなければなりません。
非常用照明には内部に電池入っており、電源供給が断たれた際に、自動で切り替わるようになっています。これで、停電や災害時等による火災で電線が焼け落ちた場合でも、避難するための明るさを確保することができます。
非常用照明の解説は「非常用照明がまるわかり!知って使える4つの種類」をご覧ください。
誘導灯は万が一の時安全に人々が避難できるよう24時間毎日稼動する設備です。安心して施設を使う為に欠かすことが出来ない反面、蛍光灯の交換が必要であったり、意外にも多くの電気を消費しています。
現在は蛍光灯型の誘導灯に変わりLEDを使用し電気代の節約や維持管理の簡略化を図ることが出来る商品が主流となっています。
誘導灯については「知って安心!災害時に重要な誘導灯の設置基準と設置除外基準」ご参照ください。
5.まとめ
・建築基準法と消防法により設置基準が定められています
・適正交換時期は8年~10年です
・非常照明器具本体の交換は有資格者が行う必要があります。
・日本照明器具工業会の評定に合格し、認定証書を天日している製品を使用しましょう
・安心して設置、交換するためにも良心的な会社を選びましょう
建物に一定の規模があり非常照明設備を設置している場合は建築基準法に基づく「建築設備定期検査」を行わなければならならない可能性があります。
当ブログ「建築設備定期検査|誰でもよく分る定期報告の内容と費用のポイント解説」で建築設備定期報告についてわかりやすく解説しています。是非お読みください。
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