建築設備定期検査では建物の何を検査するのか?検査の項目がわからない方も多いと思います。
建物には多くの設備が設置されています。その中でも建築設備定期検査で検査を行う設備は建築基準法第12条において決められています。(これを「12条点検」と呼びます。)
設備が正常に機能しているかを確認していく大切な検査です。
そこで今回は建築設備定期検査の検査項目に焦点を合わせた内容でわかりやすく説明していきます。是非この記事を参考にしていただきまして事故が起きない安全な建物を維持してください。
1.建築設備定期検査の検査項目
建築設備定期検査は「給排水設備」「換気設備」「非常照明設備」「排煙設備」の4つの項目について行われます。
これらは建物でも主要な設備のために法令で検査を行うことになっています。建物に設置されている設備の検査を行わなければなりませんが特定行政庁によって、あるいは建物の用途によっては、給排水設備だけが免除になっている行政や建築設備定期検査の報告義務のないところもありますので事前確認が必要です。
建物の所在地である行政の報告対象を確認して下さい(※東京都・大阪府はこちらから確認して下さい「東京都」「大阪府」)
それでは順番に見てまいりましょう。
1-1.給排水設備
日常生活で関わりの深い設備です。水の給水や排水をスムーズに行うために必要不可欠な設備が、給水・排水設備です。公共の給水管から受水槽に貯める、もしくは給水ポンプを使い各家庭、事務所等に直接水が供給されるようになっています。
引用元:新和設備工業
“主な検査内容”
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高置水槽、受水槽が汚染されない場所に衛生的に設置されているか、各水槽清掃・水質検査の記録の確認などの検査を行います。
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高置水槽・受水槽に通気管・水抜き管・オーバーフロー管等が適切に設けられているか検査で確認を行います。
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給水ポンプが正常に運転できているか検査で確認を行います。
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配管に腐食や漏れ・劣化がないか検査で確認を行います。
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排水設備 では、 配管の劣化、排水トラップ・排水槽の設置及び点検状況、阻集器などの清掃状況を検査で確認を行います。また、 他の配管とクロスコネクションを起こしたりしていないかを確認します。
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この検査では目視で確認できる範囲での配管設備の検査を行い隠蔽部分や埋設部分については対象となっていません。
給排水設備検査は飲料用の給水設備・排水設備の検査を行うものですが、特定行政庁によっては検査対象外としているところもあります。
“検査後に定期的に行ってほしい維持管理の内容”
- 高架水槽・受水槽は、年1回定期的に清掃・消毒・点検し、汚れの除去。
- 排水槽等は定期的に清掃・点検し、汚水・沈殿物を除去し、悪臭の防止。
- 飲食店厨房などのグリストラップは、定期的に清掃・点検。
- 定期的に水を入れて排水トラップの封水を確保し、下水からの悪臭が入らないように防止。
- 屋上等のルーフドレン(雨水排水口)に、ゴミ等により詰まらない様にして排水状況が適切かどうか確認します。
検査を実施し給排水設備に修理等改善が必要となる場合には、改善内容の提案や適切なアドバイスを行います。
詳細は「給排水設備とはどんなもの?該当設備の種類と役割を図解で説明!」でご確認ください。
1-2.換気設備
換気設備は空気中の酸素を供給する役目を担っている設備で換気扇や排気フードなどの設備があります。換気設備は室内の空気を新鮮な状況に保ち、ガス事故を未然に防止するために必要な大切な設備です。
引用元:ace works
“主な検査内容”
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換気扇による換気状態が良いか検査で確認を行います。
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給気機、排気機の運転時に正常に動作するか検査で確認を行います。
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ガス器具を使用し正常に燃焼する場合に必要な排気量の確保されているかどうかを風速計で風量を測定します。
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防火ダンパーの正常に作動するかどうか検査を行います。
では実際には、換気設備の検査対象は「無窓居室」、「火気使用室」、「居室等」、「防火ダンパー」の4つです。これだけでは分かりにくいのでひとつずつ見てみましょう。
1-2-1.無窓居室
無窓居室とは、文字通りに解釈すると窓のない部屋です。建築基準法では、換気に有効な開口部※(窓)がない部屋には、外気から強制的に換気を行なうことができる機械換気設備を設置することが義務付けられています。
※開口部は、その部屋の床面積の20分の1以上の面積必要です。窓があっても小さく決められた面積の開口部がなければ無窓居室になります。
引用元:マツドリフォーム
この義務付けられた機械換気設備が正常に作動しているか、その部屋で必要な換気量が満たされているか、空気の流れが正常かを確認する検査を行います。無窓居室に設置されている換気設備の換気量を風速計を使って測定を行っていきます。
機器の故障やフィルターの汚れ、ダクトの詰まりなど、様々な要因で必要な風量が出ていないことがあります。また、部屋の使用用途や間仕切り壁の変更などで風量の容量不足となっていることもあります。
1-2-2.火気使用室
火気使用室とはガスや石油を燃料とする燃焼器具を使用する居室のことです。
厨房や給湯室などにガス機器等の燃焼機器が設置されている場合には、必要な換気量が確保されているか検査を行います。機器の必要換気量は、機器の熱量や消費カロリーによって異なっています。厨房などの調理室では換気フードが設置されていますのでフードの換気量を測定していきます。
換気フードの換気量はガス機器が増設されていたり、熱量が大きな機器へ入替えされている場合には、換気量が不足している可能性があります。またフードフィルターの油汚れは換気量低下につながりますので、定期的な清掃が必要です。
1-2-3.居室等
居室等とは、劇場や映画館などの不特定多数の人が利用する客席がある部屋等を指します。このような居室等では機械換気設備の設置が必要となります。また、この居室には多くの人が出入りしますので、一般の室内よりも大きな容量の換気設備が設置されます。最大収容人数に対しての必要換気量が満たされているか検査を行います。
この検査では、換気設備の換気量を風速計での測定、給気口・排気口の設置位置や取付状況、風道の材質、換気系統の確認など、それぞれ関係する箇所の状況も、不具合や劣化損傷がないかみていきます。
1-2-4.防火ダンパー
防火ダンパーとは、火災時に炎や煙がダクトを通じて広がらないように遮断するための設備です。防火ダンパーは、本来「防火設備定期検査」で見るべき内容の設備なのですが、平成28年6月に建築基準法の法改正で設けられた換気設備の風道に設置されるもので、換気設備検査と一緒にみた方が合理的であるとの判断から、この検査で点検を行うこととなっています。
“検査後に定期的に行ってほしい維持管理の内容”
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換気不良等による事故を未然に防ぎ、設備を長持ちさせるためにも換気フード、換気扇、排気ガラリ、グリスフィルター等の汚れは1ヵ月~2ヶ月に1回程度清掃を行うようにしてください。
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ダクト内の油汚れやほこり等については、定期的に清掃を行ってください。
詳細は「換気設備とは何?種類や必要な検査まで必ず知っておきたいポイント」でご確認ください。
1-3.非常照明設備
非常照明設備は火事や地震等で停電した時に臨時に点灯する重要な照明設備です。非常用照明設備が点灯していると、必要な明るさが確保されるため、速やかに避難ができると共に、火災元も探すことができ消火活動も円滑に行うことができます。
引用元:ナカムラ防災
“主な検査内容”
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点検用ひもを引くと、予備電源(バッテリー等)で非常用照明装置が点灯するか検査で確認を行います。
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器具(電球については白熱灯、蛍光灯、LEDなど)が適正か検査を行います。
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照度計で照度を測定し、規定内の照度が確保されているか、災害時の避難で支障がないように確認します。
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蓄電池、自家発電機の電源に不良がないか検査を行います。
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電線の接続方法が適切か検査を行います。
よく非常用照明器具と間違われる設備は、消防法で設置が義務づけられている誘導灯です。誘導灯は非常時の明るさを確保する目的で設置されているものではなく、火災時に安全に屋外に避難できるように避難方向を示す設備です。
“検査後に定期的に行ってほしい維持管理の内容”
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非常用の照明器具からの光をさえぎる障害物は置かないよう整理を行うようにして下さい。
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球切れや、管球の劣化により照度が低下していないか定期的に確認し交換を行うようにします。
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点検用ひもを引き非常用照明が点灯するか定期的に確認を行ってください。
詳細は「非常用照明がまるわかり!知って使える4つの種類」でご確認ください。
1-4.排煙設備
排煙設備とは火災等、不測の事態が起きた時に室内で発生する有害な煙やガスを建物外に排出して人命を守る重要な設備です。
引用元:ナジコイーエス
“主な検査内容”
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排煙口の周囲に障害物があり排煙を妨げていないか検査で確認を行います。
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排煙口の取付け状態、腐食等はないか。
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排煙機の設置状況の確認を行い、かつ排煙ダクトに空気漏れはないか検査で確認を行います。
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排煙機は排煙口を開放すると自動的に起動するか確認を行います。
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予備電源(自家用発電装置または直結エンジン)の正常運転の確認。
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ダクトとの接続部に亀裂等の異常はないか確認。
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モーター・エンジンを含めて運転時に異音、振動、発熱はないか確認。
排煙設備で検査を行う設備は「機械排煙設備」になります。排煙窓のような自然排煙設備については「特定建築物定期調査」で調査を行います。
機械排煙設備は、火災時に煙を機械で強制的に排出する設備で、屋上に排煙機本体が据え付けられています。この排煙機本体と排煙口(各フロアの地下や排煙窓がない場所に設)がダクトでつながれており、火災時には手動でボタンを押したり、感知器連動で作動します。排煙口が開くと同時に本体のファンが回り、一気に機械で煙を排出します。
“検査後に定期的に行ってほしい維持管理の内容”
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排煙口は常時閉鎖され、かつ付近には障害物を置かない。年に1回の定期検査で作動確認を行います。
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手動開放装置は常に見えるようにしておきます。
詳細は「充満した煙を一気に排出して人命を守る排煙設備の基礎知識5ポイント」でご確認ください。
2.まとめ
建築設備定期検査は「給排水設備」「換気設備」「非常照明設備」「排煙設備」の4つの検査項目について行います。
4つの検査項目について全てを行わなければならない、行わなくてもいい、あるいは一部の項目のみ行う。など特定行政庁によっても考えが違いますので事前によく確認を行ってください。
建築設備定期検査は建築基準法により報告義務があり、建物を利用する人々の安全を守るためにも必要検査です。
安全を維持するためにも是非定期的に行ってほしいもにです。
「建築設備定期検査」の内容についてもっと詳しく知りたい方は当ブログ「建築設備定期検査|設備異常から守るために知っておきたい内容と費用」を是非お読みください。
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